サラーム海上×久保田麻琴

TALK SESSION

BOOM PAM“ALAKAZAM”発売記念

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サラーム海上×久保田麻琴


サラーム海上
「麻琴さんがBoom Pamに出会ったのはいつ頃でしたか?」
久保田麻琴
「2006年でしたかね。スペインのセビリアで開催された"WOMEX"というワールドミュージックの見本市に参加したんです。でも、そこで聴いた音楽にはどれも新鮮さがなくて、企画ものみたいのや、渋いものは出たりするんだけど、ある意味掘り尽くされた感じがしたんです。これから一週間どうしようと思ってたら、体育館みたいな会場からこのBoom Pamサウンドが鳴り出した。まず若いし、サーフロックで、しかもチューバがベースラインを吹いている。サーフロックでポルカ、その成り立ちがそもそも他のワールドミュージックと違ってて、ロックだけど、いわゆるロックよりも新鮮、レトロだけど新鮮。それが救われたという感じ。終ってから、彼らに”You Saved my life!”と言ったくらい良かった。その時すでに今のイスラエルの音楽の持っている魅力の芽がすでに出ていたんだね。ライヴにものすごく可能性があると思ったので、「次は是非一緒にやろう、声かけてくれ」と伝えたんだけど、それが7年前の話だね。それから、どうしてるかなと思っていたら、Youtubeで彼らの音源から”ハシシ”と言ってる部分だけを抜き出して、完璧にリミックスした曲『Hashish』が大ヒットしたのを知ったりして」
サラーム海上
「それはThe Mix Monsterが別ユニットのRADIO TRIP名義でやったリミックスです(同時発売のコンピ盤『メディタレニアン・グルーヴス&ロウ・サウンズ』に収録。The Mix Monsterは麻琴さんがプロデュースした宮古島のバンド、BLACK WAXの2nd.アルバム『Bang-A-Muli、バンガムリ』のミキシングも行っている)」
MK「そうだったんだ! すごく鮮やかなリミックスで驚いていたんだ。そしたら、いきなり去年の夏になってサラームから電話があって”来週、Boom Pamが東京でやりますよ”、なにそれ?とびっくりして」
サラーム海上
「イスラエルと日本の国交60周年記念イベント『Teder Tokyo』のために裏原宿のイベント会場でたった15分のライヴを行いにわざわざ来ると聞いたんです」
久保田麻琴
「でも、その日は私が別のライヴの仕事が入っていて。Boom Pamが来ているのに私が観れないなんて耐えられないと、すぐ何軒かのライヴハウスに電話して、たまたまサラヴァ東京の深夜が空いていたのでその場で箱を押さえた。準備期間は一週間もなくて、5日間ぐらい(笑)」
サラーム海上
「そうです。僕は長野の山奥で行われたイベントに出かける直前に麻琴さんに伝えて、そのイベントが終わって都内に戻ったら、もうフライヤーが出来上がっていたんです(笑)」
久保田麻琴
「しかもそのグラフィックはテルアビブの女性デザイナー、Daniella Weinburgの素晴らしい仕事。彼らは音楽も優れてるけど、グラフィックも良いし、ミックスするエンジニアのセンスも非常にぴりりとした、本当に聞き捨てならないというか隅に置けない。世界で最も刺激的なウィットに富んでいてエネルギーがある。彼らはしきりに謙遜して小さなシーンだよと言うけど、テルアビブってどんな町なんだろうと思うね」
サラーム海上
「音楽やアートが刺激的な一方で、イスラエルはパレスチナへの攻撃をはじめ悪名高い国です」
久保田麻琴
「そうそう。パレスチナやレバノン、シリアをいじめる軍事国家。その感じがちょうどアメリカの'70年代前半、ベトナム戦争をやっていた頃を思い出します。あの頃のアメリカの音楽は音楽史上世界最高のものだった」
サラーム海上
「アメリカが最も人を殺していた時に一番良い音楽が生まれていたと?」
久保田麻琴
「そう。ジョニ・ミッチェル、ジェームス・テイラーから、グレイトフル・デッド、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、フランク・ザッパ、特にウェストコースト中心。そういうイノベーティブで質の高い音楽が、アメリカが最も他国の人々を殺戮していたベトナム戦争の時代に生まれてたという。それと同じような、不思議な非常にアンビバレントな状況ではあるけれど。人間はそうやってバランスをとっているのかどうか分からないけれど。話を戻すと、2012年のTeder Tokyoは、イスラエル政府がお金をつぎ込んでアーティストを何人も日本に呼んだという意味ではすごく良かったと思うんだよね」
サラーム海上
「僕がBoom Pamの生演奏を観たのもその時が初めてでした。素晴らしかったですよね。地中海のサーフギター!」
久保田麻琴
「地中海だけでなく、移民の音楽だね。彼らが子供の頃、チュニジアやモロッコの音楽、ギリシャのブズーキ(弦楽器)音楽がすごく流行って、それでみんな楽しんで踊った。それが自分たちの音楽のルーツだと言ってましたね。そういうことがザ・ベンチャーズのようなサーフギター音楽に融合されて、実に鮮やかに活かされてるというか」
サラーム海上
「Boom Pamというバンド名は'60年代にイスラエルに初めてサーフギターを持ちこんだギリシャ系の歌手アリ・サン(Aris San)のヒット曲の題名から取ってるんですよ」
MK「なるほど、そういうリスペクトもあるわけだ」
サラーム海上
「当時、この曲はイスラエルでヒットしただけでなく、遠くインドのボリウッド映画でも盗用され、アーシャー・ボーズレーがヒンディー語で歌っているんですよ。僕は去年、ギタリストでリーダーのウリ(Uri Brauner Kinrot)に港町ヤッフォにある彼の自宅でインタビューしました。子供の頃からアリ・サンを聴いてたのかと聞くと、子どもの頃は欧米のロックばかり聴いていて、そういう音楽は恥ずかしくて聴かなかったと言ってました。移民の音楽はB級的な扱いだったからと」
久保田麻琴
「そういう話は私も聞きました。イスラエルに住む人種は2階層あって、ヨーロッパ系のユダヤ人と、そうじゃない地元系のちょっと褐色系のユダヤ人と……」
サラーム海上
「肌が白い東欧系のアシュケナージ、地中海系のスファルディム、中東系のミズラヒムですね。その他にイスラーム教徒のアラブ系イスラエル人、そして、パレスチナ人もいます」
久保田麻琴
「子供の時に友達の家に遊びに行くと、父方と母方が異なった文化背景を持っていたりして、出されるご飯が見たこと無くて、すごい楽しかったという話も聞きました。ウリも母親がウズベキスタン系、父親はチェコ系と言ってたね。それが音楽に影響しているところが多分にあるでしょう」
サラーム海上
「そうでしょうね。ウリは音楽学校へ行って、クラシックギターを正式に学んで、その一方でロックやブルースを聴いていて、その後になってアリ・サンを聴き直した。そこで、もう一度自分の国の音楽を発見したんです」
久保田麻琴
「若くしてそこに気がついてよかったです。我々団塊の世代は老人になるまでずっとビートルズが一番と思って来てしまった。でも、彼らは若くして、自分のルーツは何だろう? それをちゃんと音楽に還元しないとロックじゃないんだよ!と気づいた。
 そして、レトロな音楽というか、ミックス具合も非常に上手ですよね。特にコンピ盤『メディタレニアン・グルーヴス&ロウ・サウンズ』を聴くと、いつの時代の音楽かわからなくなる。今の音楽なんだけど、'72〜3年ぐらいの感じや'75〜6年のちょっとディスコ入ってる感じとか完全に確信犯でやってる。彼らはみんなヤッフォに住んでるの?」
サラーム海上
「ええ、ウリもKutimanも大都市テルアビブではなく、その南側の衛星都市ヤッフォに住んでます。ヤッフォは元々漁港の町で、今もアラブ人が多いんです。地中海が目の前にあって、玄関の前にはサーフボードが立てかけられていて……」
久保田麻琴
「カリフォルニア、ハワイ、リオ、そしてヤッフォ、どこもサーフできる町。それに一種サーフロック的なロックがそれぞれ存在している。音楽が起こる場所としてはある意味条件が揃ってるという感じだね」

BOOM PAM


久保田麻琴
「イスラエルは歴史のない新興国ではあるけど、エリアとしては中東で、エジプトやトルコのような音楽大国のすぐそばにある。だから、いよいよ満を持して、じゃないけど、今こそテルアビブのような少しイカれた環境からロック的な音楽が起きてくるタイミングなんだろうね。まさしく、Boom Pam、The Apples、Kutiman、Ramirez Brothers、女性シンガーのKarolina(全て『メディタレニアン・グルーヴス&ロウ・サウンズ』に収録)。昔で言うと、アメリカのアトランティックやワーナー・リプリーズみたいに、ジェームス・テイラーがいて、キャロル・キングがいて、そんな状況ですよね」
サラーム海上
「だから2013年の今、西海岸と言ったらカリフォルニアじゃなくて、地中海の西海岸のテルアビブですよ(笑)。
 Boom Pamは僕は本作、三枚目のアルバム『Alakazam』のすごくロウな感じが好きなんです。このアルバムで初めてライヴの生々しさが記録出来た。前の2作はそこが弱いように思えたんです」
MK「そうだね。ちょっと作りすぎていて。私が最初観た時はギタリストが2人いて、2人とも巧かった。でも、結果的に別れて良かった」
サラーム海上
「もう一人のギタリスト、ウジが辞めて、新たに結成したのがRamirez Brothers」
久保田麻琴
「それはそれで世界で一番オタクなアメリカの南部というか、アコースティック・ロックみたいな、ものすごい世界を作ってる。これもまたミックスをやっているのがThe Mix Monsterなんだよね」
サラーム海上
「Boom Pam は2013年の春に『Manara & Summer Singles』という最新ミニアルバムを出しています」
久保田麻琴
「Kutimanと一緒にやってるやつ? 体育館で録ったみたいなラフな音の?」
サラーム海上
「ええ、スタジオ・ライヴみたいな音です。前半8曲は'60〜'70年代、ウリの父親や母親の世代が青春時代に聴いていた曲をカヴァーするというコンセプト。そして、後半の3曲が新曲。Karolinaと一緒にレッド・ツェッペリンの「ブラック・ドッグ」まで取り上げています。その他にはイスラエルのミズラヒームの曲やトルコの'70年代ロックまで。僕たちはアメリカの'70年代の青春や湘南の'70年代の青春なら簡単に想像は出来るけれど、イスラエルの'70年代の青春に一体どんな音楽が聴かれていたのか想像したこともなかった」
久保田麻琴
「なるほど、そういう選曲なんだね」
サラーム海上
「最新作も良いですが、この『Alakazam』のほうがBoom Pamというバンドがよくわかる出来です。これがヒットしたら、2014年に、もしかしたら二度目の来日公演があるかもしれない」
久保田麻琴
「是非、期待しましょう。その前にYoutubeに彼らの前回の東京のライヴ動画が上がっているので、それを皆さんに観てもらいたい。誰もが観たいなと思うようなライヴだと思います(Boom Pam Live @ Saravah, Tokyo http://www.youtube.com/watch?v=jpCX9sUJ0_E)」
サラーム海上
「ウリは『地中海のギターを持った若大将』ですからね。是非また来てもらいたいです」

BOOM PAM

サラーム海上
「僕はウリのサーフギターを初めて聞いたのはバルカン・ビート・ボックスのファーストアルバム「バルカン・ビート・ボックス」だったんです。そして、彼らの初来日の時にウリに会っていたんです」
久保田麻琴
「バルカン・ビート・ボックスの日比谷野音公演の写真を見て、何でここにBoom Pamがいるんだとびっくりしたことがあった。あれはいつでしたっけ?」
サラーム海上
「2008年です。そういえば、ウリの自宅では、寺内タケシの『レッツ・ゴー 運命』というアナログ盤アルバムを自慢げに見せてくれました」
久保田麻琴
「そうそう、東京でも、寺内タケシを買いたいんだと言っていた」
サラーム海上
「日本に寺内タケシがいるし、サーフロックは全世界的な音楽だと言ってました。それにギターを習い始めたら真っ先に……」
久保田麻琴
「最初に”テケテケ”とやりたくなる(笑)」
サラーム海上
「それにサーフロックは歌手ではなく、ギターが主役の音楽ですからね。サーフロック以外のロックは基本的にヴォーカルが主役ですから」
久保田麻琴
「Boom Pamのこの感じは、例えばキャレキシコとか、エンニオ・モリコーネ的なマカロニ・ウエスタンに近い。何と言うか、どこでもあって、どこでもないような、地中海的な荒野というか。当時、マイルズ・デイヴィズなどを聴いていた私たちはベンチャーズを馬鹿にしていたけれど、あれはすごく不思議な音楽なんですよね。どこの国の音楽か分からない。だから日本でウケたのも何かわかるんだよね。けっこうNowhere music(どこでもない音楽)なんですよ。あれ、ユダヤ音楽なのかネイティブ・アメリカンの音楽なのか、『アパッチ』という曲があるけど、ノーキー・エドワーズ(ベンチャーズ最盛期のギタリスト、チェロキー族の血を引く)の顔を見るとやっぱりネイティブ・アメリカンが入ってるしな。そういう不思議な人の血や心の壁と対話したり、行ったり来たりする要素というのが、こういう音楽にあるんですよね。リズムの中に。このアルバムに収録されているカヴァー曲『ハーレム・ノクターン』はキャバレー音楽としても知られているけれど、アメリカのギリシャ系移民で黎明期のR&R歌手、ジョニー・オーティスが取り上げて有名になったんですよ」
サラーム海上
「なるほど、20世紀アメリカの音楽におけるエスニシティーですね」
久保田麻琴
「ボ・ディドリーのボ・ディドリー・ビートもそうだけど、アメリカのロックに中東的な要素を入れる人がいつもいたんですよ。ジョニー・オーティスはロックとブルースの中間ぐらいの人で、ギリシャ移民のメンタリティーだからこそ、こんな『ハーレム・ノクターン』みたいな曲をヒットさせた。世界のバー・ミュージックの定番曲ですよ。それをここでちゃんと取り上げてるBoom Pamやっぱりすごい。パースペクティブ、目線がでかいです。そして、チュービー(Yuval "Tuby" Zolotov)が吹くチューバがいいね」
サラーム海上
「『サーフィン・チューバ』というそのままの曲もありますね」
久保田麻琴
「チュービーはとぼけた、ものすごい良いキャラのオッサンなんだけど、バンドが忙しくない時は、何と医療用大麻の研究所に務めている(笑)。そっちの専門家なんだとウリが笑いながら話してくれた」
サラーム海上
「知らなかったです(笑)」
久保田麻琴
「サーフィン音楽とチューバをちゃんと自分たちのコンセプトとして持っている。プレゼンの仕方がすごく分かりやすい。東京公演の時にゲストにベンチャーズを弾かせたらNo.1のギタリスト、Dr.Kこと徳武弘文くんを呼んだんです。当日電話して、イスラエルのベンチャーズ・キッズがいるから来てくれる?と。その場でばっちりセッション出来ましたからね。実際にBoom Pamはベンチャーズの前座をやったことがあるんだよアメリカで。ルーツへのリスペクトが強いよね」
サラーム海上
「このアルバムの最後の曲『マリブ』なんか本当にそう」
久保田麻琴
「『涙の御堂筋』という感じ。欧陽菲菲に歌ってもらいたいような(笑)。あー、次回はそういうことやりたいよね。スペシャルゲストが欧陽菲菲で『涙の御堂筋』。聴きたいわ、これは。ゴーゴー!(笑)」

(2013年10月7日 祐天寺Tuff Beatsにて)


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